活字書体をつかう

Blog版『活字書体の花舞台』/『活字書体の夢芝居』/『活字書体の星桟敷』

「平成角ゴシック体」制作秘話

日時: 2013年12月22日(日) 15時15分—17時15分
場所: 新宿区榎町地域センター 小会議室
内容: 平成角ゴシック体について


日本タイプライター株式会社で「平成角ゴシック体」を制作されたAさんにお話をうかがいました。以下、聞き書きのメモからの要約です。

日本タイプライター株式会社について
日本タイプライター株式会社は1917年(大正6年)創業以来、和文タイプライターを生産・販売していました。和文タイプライターの市場の縮小にともない、1985年(昭和60年)にキヤノン販売株式会社と資本提携を行い、キヤノングループの一員となったそうです。
 その後、2001年 5月に社名を日本タイプライター株式会社からキヤノン・エヌ・ティー・シー株式会社に変更しました。2003年にはキヤノン販売株式会社の完全子会社になり、さらに現在のキヤノンセミコンダクターエクィップメント株式会社として統廃合が実施されました。

「平成角ゴシック体」のアナログ原字
「平成角ゴシック体」のアナログ原字は、おもにAさんとその上司にあたる方の2人で制作されたそうです。助っ人としてあと2人が加わったこともあるそうですが、基本的には2人だったということです。日本タイプライターでアナログ原字として制作したのは、W5とW9の2ウエイトでした。
 監修は、平成明朝体と同じく、平成角ゴシック体も小塚昌彦氏だということです。ただAさんによると、会議には出席されていたそうですが、直接、現場で指導されたということはなかったとのことです。
 原字サイズは、2インチの近似値の50mmボディだったそうです。まず、トレーシング・ペーパーに下書きし、さらに別のトレーシング・ペーパーに清書したということです。その際、偏や旁などはあらかじめ作成したものをトレースしていったそうです。
 さらに、硫酸紙にレタリング・ゾルというインクで墨入れします。雲形定規や烏口でアウトラインを描き、筆で塗り込みました。修整はホワイトは使わないで削ったそうです。最終的には墨入れしたものを、フィルムに撮影したそうです。

デジタル・データ
アナログ原字が中心でしたが、それと同一のデジタル・データも提出も求められていました。
 デジタル化は、キヤノン販売の技術協力によって、茨城県岩井市(現、茨城県坂東市)にあった日本タイプライター岩井工場で、同社のデジタルフォント制作部門が担当しました。アルバイト、派遣などを含めて、およそ30人ぐらいが従事していたそうです。