活字書体をつかう

Blog版『活字書体の花舞台』/『活字書体の夢芝居』/『活字書体の星桟敷』

嚮搨

最近、王羲之展の関連番組の影響で、話題になった双鉤填墨。
もっとも忠実に原本を複製する技術だ。

双鉤とは文字の上に薄紙を置いて輪郭だけを線で写し取ることで、
写した文字の輪郭の内側を墨で塗り同じような文字をつくる。

漢字書体二十四史、和字書体三十六景は、
この技法の応用であるともいえる。
活字書体の場合、アウトラインが合理化されることにより、
文字は公共性を持ち、可読性や判別性が高められる。

ところが、それだけではうまくいかない書体がある。
清代の刊本字様である「花信」「月光」だ。

そこで試してみたいのが、もうひとつの手法、嚮搨法だ。
嚮搨とは原本を敷き写しにすることである。

写した人の筆癖があらわれるために
原本とはちがった印象になってしまううことがあるが
原資料が不鮮明な場合、
筆の動きを確かめるためには効果的ではないかと思っている。