活字書体をつかう

Blog版『活字書体の花舞台』/『活字書体の夢芝居』/『活字書体の星桟敷』

映像・ウェブ部門 entry No.1–3

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2005年

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天童荘」のウェブデザイン

 天童温泉「天童荘」のウェブサイトには、2005年から「きざはし金陵M」が使われている。2005年といえば、「きざはし金陵M」が発売された翌年である。

ウェブフォントではないが、当時はほとんどのページのテキストすべてに「きざはし金陵M」が使われていた。以下、2014年に書いていた記事である(上の写真は2014年当時のもの)。

二十四節気のおもてなし」というキャッチフレーズは、そのときからのものだろう。ホームページには、二十四節気の名前(立春雨水啓蟄春分清明……)が「きざはし金陵M」で並ぶ。なかなかしゃれている。

天童温泉は、1911年(明治44年)に高温の源泉を掘り当てたのがはじまりとされる。四季を通じて楽しめる旅情あふれる温泉である。「天童荘」の大浴場のページには「きざはし金陵M」で効能が語られている。また、「離塵境」という離れの客室には高野槙の風呂が付属しているという豪華さだ。

もともとは鰻屋だったそうである。明治の初めに鰻屋から始め、昭和になって旅館業となったようだ。鰻屋の出だけに、料理には特に注意がはらわれている。天童荘懐石と銘打った料理は、季節感を大切にして地元の旬の素材を生かしているという。創業時からの決まりで、鰻料理が必ず付いている。

隣接の「天童荘ガーデン」は、ガーデン・スパとガーデン・カフェからなる施設である。ガーデン・スパは宿泊者専用だが、ガーデン・カフェは宿泊者以外でも利用できる。こちらのページにも「きざはし金陵M」が使われている。

15年が経過し、ウェブサイトがリニューアルされて、テキスト部分がウェブフォントになり「花蓮華M」に変わっているが、見出し部分ではいまなお「きざはし金陵M」が使い続けられている。とくに「二十四節気のおもてなし」というキャッチフレーズや、二十四節気の名前のページは「きざはし金陵M」のままである。とてもうれしい。

 

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2018年

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カプリチョーザ」のウェブデザイン

 「ワカバウォーク」は東武東上線若葉駅東口前にある複合商業施設である。オープンモール形式で、2階建て3棟の建物とそれを結ぶ連絡通路から構成されている。

食品スーパー「ヤオコー」を核として、シネマコンプレックスユナイテッド・シネマわかば」や書店「ワイシーボックス」をはじめ、50を超える専門店が立ち並び、あたかも一つの小さな街になっている。ここには鶴ヶ島市の行政サービスをおこなう「鶴ヶ島市役所若葉駅前出張所」や、市民活動の総合情報拠点となる「鶴ヶ島市市民活動推進センター」もある。

その中にイタリア料理「カプリチョーザ」のワカバウォーク店がある。ワカバウォークは私の生活圏内にあるので、「カプリチョーザ」もたまに利用している。

 

カプリチョーザ」は全国100店舗以上のチェーン店で、ワカバウォーク店はフランチャイズ店のひとつである。その「カプリチョーザ」の公式ホームページには「KOさおとめ金陵M」のウェブフォントが使われているという情報を得た。

カプリチョーザとは
イタリア語で“気まぐれ”という言葉の意味。
イタリア料理は大勢でワイワイ言いながら食べるのが楽しい。
そんな陽気で明るい南イタリアのトラットリア(大衆食堂)タイプの
イタリアンレストラン。

この「カプリチョーザとは」という文章をはじめ、ニュースのページ、メインメニューのページ、店舗案内のページなどに、「KOさおとめ金陵M」のウェブフォントが多く使われている。そして「創業ストーリー」「トマトへのこだわり」「ファミリーブラント」のページでは、短い文章が「KOさおとめ金陵M」で組まれている。

ウェブフォントはこれから発展する可能性のある分野である。「カプリチョーザ」公式ホームページは、記念すべき第一歩となった。

 

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2020年

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蜂谷眞未・公式サイト

蜂谷眞未さんは、舞台を中心として活躍している女優である。と書いたが、私はまったく知らないので、公式サイトに記載されているプロフィールから調べてみることにした。

公式サイトでは代表作として、2015年の演劇実験室◉万有引力寺山修司33回忌/生誕80年――説教節の主題による見世物オペラ――「身毒丸」』の撫子役、2019年の劇団カムカムミニキーナ『両面睨み節〜相四つで水入り〜』の鹿森博士役を挙げている。

またテレビ朝日の土曜ワイド劇場で放送された『大崎郁三の事件散歩』(地井武男主演、2012年)など映画・テレビドラマ、『ほんとうのさいわい――銀河鉄道の夜』の朗読や、J・A・シーザーリサイタル『荒野より』の音楽活動など幅広く活動しているようだ。

この「Veronica's Red Dahlia 蜂谷眞未オフィシャルサイト」に、ウェブフォントの「KOきざはし金陵M」が使われているのである。サイトのデザインは、スマートフォンに適するようになっている。

四月にリニューアルしたそうだ。この書体が蜂谷眞未さんのイメージに合致しているとしたら、ありがたいことである。

 

一般的に、ウェブのタイポグラフィはまだまだと感じることが多い。一番気になるのは、行間が狭すぎて読みづらいということである。行間の調整は可能なので広くした方がいいと思う。特にスマートフォン用では行長が短くなるので、行間の狭さが増幅される。「KOきざはし金陵M」のような字面が小さい書体では、レタースペースが広くなり、行長が短いのは致命的だ。

さらに気になるのは、和字の丸括弧を使うべきところで欧字のパーレンが使われていたり、エムダッシュが音引きになっていたり、アポストロフィが間違っていたりというところだ。これはウェブデザイナーの意識に起因することだろう。

日本語のウェブフォントがまだまだ未完成のところがあるのかもしれない。ウェブサイトや電子書籍などの新しいメディアはまだまだ課題が多いのであるが、発展する可能性が大きいとも言える。