活字書体をつかう

Blog版『活字書体の花舞台』/『活字書体の夢芝居』/『活字書体の星桟敷』

グラフィック部門 entry No.1–3

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2013年

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「国宝興福寺仏頭展」

はじめに出会ったのは、ある展覧会に行ったときに偶然みつけたA4二つ折りのリーフレットだった。美しい銅造仏頭(国宝)とともに、「国宝興福寺仏頭展」という大きな文字が「さきがけ龍爪M」で組まれていた。会期(2013年9月3日—11月24日)、会場(東京藝術大学美術館)、その他の情報の小さな文字も「さきがけ龍爪M」だ。ご自由にお取りくださいという感じで置かれていたので、記念にいただいてきた。

再会したのは2013年11月のはじめ、地下鉄車内の中吊り広報物だった。仏頭が左右両方で展開されていて、なかなか目を引くレイアウトだ。「白鳳の微笑みに会いに」、ちょっと行ってみようと思った。のこりの開催期間が少なくなっていた。

久しぶりの上野駅だった。構内を抜けて公園口の改札から出る。上野公園を横切って、東京藝術大学の脇を通っていくと、展覧会のポスターが貼られていた。「さきがけ龍爪M」もさらに大きくなって迫力満点である。

「国宝 興福寺 仏頭展」は思っていたより、人気があるようだった。すでに多くの人が訪れていて、入場制限が行われていた。その向こうにドーンと看板が。さらに大きくなった「さきがけ龍爪M」。まずは、この看板を仰ぎ見ることにした。

なんと、この看板を背景にして記念写真を撮っている人がいる! 私がいるあいだに何組も記念写真を撮るひとがいるのだ。もちろんその美しい銅造仏頭が目当てなのだが、「さきがけ龍爪M」も写り込むといいなと思ってしまった。

「白鳳の微笑みに会いに」きた。少しばかり並んで、やっとチケット売り場にたどり着いた。チケットには米粒より小さい「さきがけ龍爪M」がいた。小さいなりに、シャープで存在感があるように感じた。

肝心の展示のことも少しは書いておこう。メインの銅造仏頭(国宝)はもちろん、木造十二神将立像(国宝)と板彫十二神将像(国宝)も圧巻だった。また、春日版板木(重要文化財)を見ることができたのもよかった。

 

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2016年

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雛人形で彩る陶磁器会館」

2016年2月19日に、名古屋市蓬左文庫の開館80周年記念展示「コレクションが語る蓬左文庫のあゆみ」を観にいった。そのとき徳川美術館では開館80周年記念展示「尾張徳川家の雛まつり」をやっていた。そこで「文化のみちスタンプラリー」というフライヤーを目にした。名古屋陶磁器会館では企画展「雛人形で彩る陶磁器会館」が、文化のみち二葉館では「川上貞奴の手書き雛の羽織と雛人形」展が開催中とのことだった。

名古屋城から徳川園に至るエリアには、江戸から明治、大正へと続く名古屋の近代化の歩みを伝える貴重な歴史遺産が多く残されているということで、「文化のみち」と名付けて活用をすすめているということだ。

雛人形に興味があるわけでもなかったし、スタンプを集めようとは思わなかったが、徳川美術館に置いてあった名古屋陶磁器会館のフライヤーに「あおい金陵M」を発見したこともあって、名古屋陶磁器会館から文化のみち二葉館へと巡ってみることにした。

名古屋陶磁器会館は昭和7年に建築された国登録有形文化財で、名古屋市重要景観建造物である。映画やドラマ、雑誌の撮影場所としても活用されているとか。その玄関脇に置かれた看板の「あおい金陵M」が出迎えてくれた。

企画展「雛人形で彩る陶磁器会館」は、2016年2月5日(金)—3月4日(金)まで、土日祝は休館(会期中の日曜日は12時—16時開館)とのこと。金曜日だったのはラッキーだった。フライヤーには2種類あった。「縦組み版」「横組み版」ということにする。どちらも企画展のタイトルに「あおい金陵M」が使われている。

会場に入ると、陶磁器製の雛人形が並んでいた。中外陶園・薬師窯(瀬戸市)の陶磁器製の雛人形である。また、TK名古屋人形製陶(瀬戸市)の陶磁器製の雛人形は、日本で唯一製造されているレース人形で、男雛の纓と女雛の後ろのリボン部分がレースになっている。

瀬戸製の雛人形のほか、「名古屋絵付け」を施した名古屋オリジナルの立雛なども展示されていた。なごや凸盛隊・安藤栄子さんの絵付け「凸盛り春盛りお雛様」など、白磁に様々な絵付け技法を施した作品もあった。

展示会場にもうひとつのフライヤーが置いてあった。2月27日(土)に開催される「名古屋絵付け~現在・過去・未来~」のフライヤーである。ここにも「あおい金陵M」が縦組みで使われている。

 

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2017年

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「奈良 西大寺展」(大阪展)

「創建1250年記念 奈良 西大寺叡尊と一門の名宝」は、西大寺の創建1250年を記念し、東京展、大阪展、山口展を巡回して開催され、西大寺の所蔵する彫刻、絵画、工芸、古文書などの国宝、重要文化財を含む名宝が公開された。

東京展:2017年4月15日(土)—6月11日(日) 三井記念美術館

大阪展:2017年7月27日(土)—9月24日(日) あべのハルカス美術館

山口展:2017年10月20日(金)—12月10日(日) 山口県立美術館

東京展の期間内にはこの展覧会があることすら知らなかった。初めて知ったのは、大阪展のフライヤーに「ひさなが志安M」が使われているとの情報が届いた時だ。「創建1250年記念 奈良 西大寺叡尊と一門の名宝」というタイトルだけとはいえ、「ひさなが志安M」が実際に使われているのを見るのは初めてだったので素直にうれしかった。

それでは山口展のフライヤーはどうだろうかと山口県立美術館のウェブサイトを覗いてみたら、フライヤーのPDFが置いてあった。フライヤーのなかに「ひさなが志安M」は見当たらなかった。タイトルは分断されているが、いわゆる描き文字(レタリング)だった。少しポップな感じがする。

東京展はすでに終了しているが、三井記念美術館のウェブサイトの「過去の展覧会一覧」のページに画像が残されていた。明朝体を加工して使っている。もちろん「ひさなが志安M」はない。

東京・大阪・山口各会場独自の展示構成とはいえ、西大寺所蔵の名宝であることには違いない。フライヤーはどれも仏像をモチーフにして、タイトルの文字を重ねているが、まったく違う表情を見せている。タイトルの書体の違いによって、異なる展覧会のようになるのが面白い。それぞれの意図があるのだろう。