活字書体をつかう

Blog版『活字書体の花舞台』/『活字書体の夢芝居』/『活字書体の星桟敷』

Section 3 電算写植システムと書体のこと

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電算とは電子計算機の略で、コンピューターのことである。電算写植システムは、入力・編集・組版処理を行う装置と、自動電算写真植字機(出力装置)で構成される。

※筆者は技術的なことは全くわからないので、活字書体の記憶媒体を中心に記すことにする。また写研の電算写植システムについて(他社のことはよく知らないので)のみを記している。

 

光学式電算写真植字機(SAPTON)

ガラス文字円盤に書体を収録して回転させて選字、露光する方式で、アナログタイプであるということでは手動写植機の文字盤と同じである。光学式写真植字機用として開発されたのが本蘭細明朝体である。手動写植機でのバックアップも必要とされていたので、同じ原字を用いて手動写植機用文字盤も製作された。

CRT式電算写真植字機(SAPTRON)

CRT(ブラウン管)からレンズ系を経て露光する方式である。書体はデジタルデータになり、その形式はランレングスフォント、ベクトルアウトラインフォント、曲線アウトラインフォントと変化していった。曲線アウトラインフォントということでは現在のDTPと変わらない。

CRT式電算写真植字機用として本蘭明朝ファミリーが制作され、同じ原字を用いて手動写植機用文字盤も製作された。この時に本蘭細明朝体は少し調整して本蘭明朝Lとなった。

レーザー式電算写真植字機(SAPLS)

レーザーの走査によって印字するもので、画像や写真の出力もできるようになった。

本蘭ゴシック・ファミリーはレーザー式電算写真植字機専用として制作され、もはや手動写植機用文字盤は製作されなかった。本蘭ゴシック・ファミリーとともに試作していた本蘭アンチック・ファミリーは制作されなかった。

 

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入力・編集・組版処理装置

SABEBEに始まり、SAMITH、SAZANNA、SAIVERTを経て、GRAF、SAMPRAS-C、Singisなどの機器が開発された。組処理プログラムとしてはSAPCOLが搭載されている。SAPCOLの用語や処理機能は、日本工業規格JIS X 4051「日本語文書の組版方法」にも組み込まれている。ほかに組処理装置のRETTON、普通紙出力装置のSAGOMESなどがある。

 

文字入力方式

フルキー式からシフトキー式、ペンタッチ式へと変化し、漢字かな・ローマ字変換方式へと展開した。また編集・レイアウト装置では、鑽孔テープに記録する方式から始まり、高度なバッチ処理方式になり、WYSIWYGレイアウト機能付きの編集機が開発されると複雑なフルページ組版が行えるようになった。

手動写真植字機用文字盤用に制作されていたほとんどの書体がデジタル化され電算写植機でも使えるようになった。さらにニモニック・コードによって多書体が同時に使用できるようになった。