活字書体をつかう

Blog版『活字書体の花舞台』/『活字書体の夢芝居』/『活字書体の星桟敷』

Section 2 手動写真植字機と書体のこと

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株式会社文字道は、現在でも稼働する万能手動写植機PAVO–KY、小型手動写植機SPICA–AHをはじめ、数台の手動写植機を保有されている。市販されているほぼすべての写植文字盤も保有されており、文字盤専用の「サガサーヌ」というロッカーに収められている。

typeKIDSで、その写植工房を見学する機会を得た。当日は、株式会社文字道の伊藤義博さんに実演をまじえて、「いまりゅうD」と「今宋M」を題材にして、写植機の機能を中心に説明していただいた。

横組用日本語書体「いまりゅうD」は14/16em(28/32em)で設計されている。メインプレートには、縦組み用の音引きや約物は収録していない。「いまりゅうD」のTかな文字盤(T=プロポーショナル)は、16ユニットシステムで設計されており、和字書体の場合は、8ユニット(8/16em)から16ユニット(16/16em)の範囲で自動送りができる。文字盤の右端にある赤い数字がユニット数を表している。E欧文の文字盤の左側にある右肩にSがついた文字がカーンドレター。合字なども収録されている。「いまりゅうD」のE欧文文字盤(E=プロポーショナル)。欧字の場合は、4ユニット(4/16em)から16ユニット(16/16em)の範囲で自動送りができる。※書体によって、2ユニット(2/16em)から14ユニット(14/16em)の範囲で自動送りができる文字盤もある。

縦組用日本語書体「今宋M」は、基本的には長体2で使用する設計になっている。横組み用の音引きや約物は収録していない。欧字書体は記号用として、漢字、和字と同じく右上がりに設計されている。E欧文文字盤は制作していない。

 

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このほかにも多くの特殊文字盤や貴重な資料を、次から次へと見せていただいた。手動写植機用書体見本帳(第46版)もあった(写真)。初期に制作された石井中明朝体、石井太ゴシック体は、東京築地活版製造所の活字書体を復刻することから始められている。